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フィリピン・よもやま帖 2018 その−(4) 貧しい国といわれるフィリピンの大富豪たち2017年番付け

 フィリピンの政治、経済は100家族前後が動かしているといわれ、政治は各地方に昔から根を下ろす一族が議員や首長などの公職を一族間でたらい回しするのが常態化していて家業となり、これがフィリピンの貧困を解決できない元凶となっている。

【写真−1 セブ島内にはSMは3ヶ所ありここは一番小さい

 人口1億人を悠に超え、やがてはフィリピンは人口では日本を追い抜くと予測される中、中国系フィリピン人は100万人、人口のおよそ1%程度、つまり100人に1人という少数派で、他の東南アジア諸国、例えばタイの20%以上という数字から比べて非常に少ない。

 もっともこの1%という数字は、フィリピン人との婚姻、家族関係を嫌う中国人であり、中国系の血統を引くフィリピン人を含めると数字はかなり増える。数字の上では少数派でも、その経済力と影響力はフィリピンに大きな力を及ぼしていて、国内主要産業は中国系が占め、フィリピン人はそのおこぼれで経済活動をしているとまでいわれている。

 毎年、世界の大富豪ランキングという番付けが経済誌で発表されるが、10億ドル以上の資産を持つ大富豪は世界には2124人いて、2017年度版ではフィリピン人は12人がランク入りしていた。

 フィリピン人1位は11年連続の『ヘンリー・シー』で資産額200億ドル(約2兆1千億円)、前年は94位であったのが52位に上昇。シーは中国・福建省からの移民ながら一代でこの資産を築き上げた立志伝中の人物。

 その始まりは靴の販売からで、そのため、国内最大のショッピング・モールを展開する小売り業最大手として君臨する社名は靴を表す『シュー・マート=SM』【写真−1】で3歳の子どもでも知っている社名である。

 この他国内最大の銀行グループを持ち、不動産開発、建設など国内でも有数の財閥になっているが、当人は既に93歳、車椅子を使う生活でいくら金があっても寿命と健康には勝てないとやっかみ半分で揶揄されている。

【写真−2 SMに近い場所に開業したが客足は今一つ悪い】

 2位にはやはり中国系の『ジョン・コゴンウェイ』が入り資産額は58億ドルで、世界では305位に入っている。コゴンウェイもやはり91歳と老齢だが、新興ながら老舗のフィリピン航空を追い越す勢いを持つ低価格航空会社のセブパシフィック航空やロビンソン【写真−2】というモールを全国展開し、大手不動産会社や大手食品会社、石油化学大手も傘下にある。

 3位には『エンリケ・ラソン』が49億ドルで世界404位と入り、エンリケは58歳でフィリピンからは最年少のランク入りとなった。この人物は港湾におけるコンテナ・サービスを世界各地で展開する会社を持ち、アフリカのマダガスカルでも展開していると聞いた時は驚いたものである。

 ただし、本業は固いもののマニラ湾における巨大カジノ施設経営で莫大な資産を築いている。エンリケというようにスペイン風の名前が付いているが、顔はスペインの血が入っていて、やり手ではあるが一代で起こしたものではなく、元々家業として港湾業務会社の三代目。

 

【写真−3 セブ―成田便の成田到着】


 4位は『ルシオ・タン』。この人物は典型的な政商で、汚職で追われたエストラダ元大統領時代に、フィリピン航空【写真−3】が莫大な赤字を抱えて倒産した時どういう手を使ったのか持ち堪えて今も同航空を持つ。

 他に政府の資金が入っている半分国営の銀行や煙草会社、酒類醸造会社などを持ち、資産額は47億ドルで世界441位。しかし、フィリピンの中国系大富豪の中では一番悪名高いこの人物も、既に83歳、いくら金を持っていようと寿命は伸ばせない。

【写真−4 このようにジョリビーとマクドナルドが対峙する場所も多い】

 5位にはフィリピンのファースト・フード業界の最大手ジョリビー【写真−4】創業者の『トニー・タン』が40億ドルで世界550位に入った。ジョリビーというのは1970年代半ばにアイスクリーム屋としてケソン市で商売を始めたのが最初で、その後ハンバーガー・チェーンとして躍進し、現在国内には1000店舗以上あり、ジョリビーがあるかないかでその町の格が違うとまでいわれている。

 この他ピザ、中華、ケーキなど多くのファースト・フード企業を吸収してフィリピン国内店舗数は2,684店に達している。また、香港やシンガポール、中東などにも進出し日本にも出すという話だが、小生などジョリビーの品物などタダでも食べたくない。しかし、フィリピン人の嗜好に合わせた戦略は見事で、マクドナルドもフィリピンではジョリビーに勝てない。

 6位は『ジョージ・ティ』85歳が39億ドルで世界572位。銀行大手を所有し、トヨタ自動車のフィリピン側パートナーで、フィリピンで売れる新車の半数近くはトヨタ製なので入る利益も大きい。

 7位に元上院議員の『マニー・ヴィラール』68歳が30億ドルで世界791位。この人物は2016年の大統領選に立候補し、現大統領のドゥテルテが出馬するまでは当選確実と見られていたが、選挙は分からないもので巨額の選挙資金を投じても結局落選。

 元々、苦学して不動産業界で巨万の富を築いたが、その事業も行く末はスラムになりそうな小さな建売住宅をたくさん立てて安く売ったことで、時代を読む目端は利いていたのは確か。ちなみにアメリカの馬鹿大統領トランプは世界766位で、ヴィラールはトランプとほぼ近い資産額。

 8位は『アンドリュー・タン』64歳が27億ドルで世界887位。この人物は不動産大手の経営者で建設バブルに乗って資産額を増やし、他に酒の醸造会社を持つ。

 9位は『ラモス・アン』64歳が25億ドルで世界965位に入り、この人物は今やビールで有名なサン・ミゲルではなくあらゆる分野に投資する複合企業体となったサン・ミゲル社を率いている。

 10位に保険と車販売で財を成した『ロバート・コイウト』が14億ドルで世界1650位に入るが、マルコス以降銀行と保険会社が著しく伸びているのと関係がある。

 11位にはルシオ・タンと並ぶ政商で知られる『エドアルド・コハンコ』82歳が13億ドルで入る。この人物はマルコス独裁政権時代にマルコスと結託して、さんざん国を食い荒らし、マルコスがハワイに逃亡した時やはりアメリカに逃げた。

 ところがいつの間にかフィリピンに戻っていて、いつの間にか大統領選に出馬する力を盛り返した。こういう人物が復権するフィリピン人の倫理観もどうかと思うが、ともかく金はあるのでそこに群がる取り巻きは政官財に網の目のように広がっている。

 なお、アキノ元大統領(母)とは従兄弟同士で、アキノ前大統領の叔父さんに当たり、実家はルイシタという名前の中世の土地制度そのものが残る大砂糖キビ農園をルソン島中部に持つ。

 12位は『ロバート・オンピン』81歳が11億ドルで名を連ねている。この一族は政治分野でも著名な人物を生んでいるが、不動産関連とインターネット・ギャンブル会社を傘下に持つ。

 こうやってフィリピンの大富豪を列記して行くと、まず中国系、銀行という名の金貸し業、酒や煙草、ギャンブル関連業、建設、不動産、交通と共通点が多い。地道な製造業などでは資産は作れないようで、あってもなくても良いような職種ばかりで大富豪への道というのは実に単純。

 こういう天文学的な大富豪が存在するフィリピンだが、最近、貧困層に毎月200ペソを配る政策が採用された。200ペソというのは4ドル弱で、このたった月4ドルの援助でも貧困層には助かる金額で、フィリピンの貧富の格差は昔から差が開く一方。


 

author:cebushima, category:フィリピン・よもやま帖 2018, 19:05
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