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フィリピン・よもやま帖 2018 その−(12) 暗殺天国のフィリピンでゴルゴ13もどきの市長狙撃事件

 2016年6月の大統領選で、泡沫候補であったドゥテルテが『麻薬撲滅』1本の政策で劇的な当選を勝ち取って、それから3年目に入った。
 

【この町の町長も5月に襲撃されていて暗殺される怖れを抱いている】


 この麻薬撲滅政策は単純そのもので、警察力を使って容疑者を殺害する手法を使い、以来2年間で警察発表だけでも5000人近く、人権団体の調べではその3倍の15000人は殺害されたと見られている。

 当然、誤認やとばっちりで麻薬など関係ない者も殺害され、それを隠蔽するために警察が証拠品を捏造するなどでっち上げが横行し、処刑ともいわれるドゥテルテの手法は法体系を完全に無視していると、内外から強い批判を浴びている。

 しかしドゥテルテはどこ吹く風で殺害を進めていて、このように人間の命など屁とも思わない気質がフィリピンには底流にあって、何か問題があれば相手を消す、即ち『暗殺』することが当たり前になっている。

 特に政治的暗殺は頻発し、自治体の首長や議員が何者かに襲われて殺されるなど毎日のように新聞紙面を賑わすが、不思議と犯人は捕まらず、警察や軍と関係のある者が事件に関わっていると噂されている。

 7月2日午前8時10分頃、マニラ首都圏南部にあるバタンガス州タナウアン市(人口約18万人)で、同市長が市庁舎前で行われていた国旗掲揚中に狙撃され死亡する事件が発生し、同市長は左胸に1発撃たれ、病院に搬送されたが1時間後に死亡が確認された。

 

 通常、フィリピンで発生するこの手の暗殺事件は自動車に乗っている時に、オートバイに乗った殺し屋が窓越しに拳銃を発射して殺害する例がほとんどで、同市長の暗殺は160メートル離れた草むらから銃弾が放たれていて、まるで『ゴルゴ13』のような奇怪な事件となった。

 

 狙撃による暗殺事件として今も強く記憶に残るのは1963年11月22日、アメリカ・テキサス州ダラスであった『ケネディー暗殺事件』があり、この事件は色々怪しい点があって、いまだ真相は解明されていない。

 

 ケネディーを狙撃した人物は教科書会社ビル6階の窓から狙撃したとなっていて、車に乗って移動中のケネディーを狙撃したが、この時のケネディーまでの距離は70〜80メートルであり、3発を撃ったとされている。

 

 しかし、使われた銃がイタリア製の通信販売で買える代物で、いくら腕が優秀でも数秒間に動いている標的に向かって3発を撃ち、命中させることは不可能との見方もあり、こういったこともありケネディー暗殺事件の謎を呼んでいる。

 

 フィリピンの今回の市長暗殺事件は、動いていないとはいえ160メートルの距離、しかも1発で成功しているため、狙撃犯は専門的な訓練を受けている人物で、軍あるいは警察の現役もしくは退役者ではないかと見られている。

 

 使われた狙撃銃は発射された弾丸が発見されていないので断定されていないが、専門家筋では『スプリングフィールドM−14』もしくはその派生型で狙撃に優れた『M−21』ではないかと見られている。

 ヴェトナム戦争中に使われた主力銃のM−16はこの M−14を改良したものだが、M−16及びM−14はその後フィリピンなどの友好国の軍に払い下げられた経緯があり、これらの銃はフィリピン国軍から横流しなどがされてかなりの数が国内に出回っている。

 さて、暗殺された市長だが、麻薬容疑者抹殺政策にも積極的でドゥテルテの強い支持者として知られ、捕えた容疑者を市内の道路に見せしめのために歩かせたくらいだが、実は裏では麻薬に関与していると噂され、ドゥテルテも麻薬関与者として名前を挙げている。

 

 ドゥテルテが大統領に就任してから、麻薬に関与する首長や議員などを実名で公表したことは知られるが、そのくらいフィリピンには有力者と称する人物が、麻薬に関係しているのは珍しくないが、公表されてもこういう悪党は面の皮が厚いのはどこの国でも共通で、のうのうとしているのが実態。

 

 そのためミンダナオ島やレイテ島で市長や町長が相次いで襲撃、殺害され、どこまで本当か定かではないが、ドゥテルテの命を受けた暗殺部隊が動いたのではないかともいわれている。

 

 ただし、暗殺を実行するのはドゥテルテの意を汲んだ組織だけではなく、麻薬シンジケートが口封じのために殺害しているという見方もあって、その辺りの事情は双方が都合の良い情報を流していて、真相は全く分からない。

 

 セブ島でもドゥテルテから麻薬関与者と名指しされた首長がいて、この人物はセブ島最北の町の町長で町長になる前は国家警察の高級幹部というから驚かされるが、2016年選挙では7票差で当選。

 

 この選挙では現職町長を破っているが、この現職はその前の選挙で現職を破っていて、その落選した現職が麻薬関与者と名指しされた現町長の妻で、この妻の息子は州会議員をやっていて、フィリピン中どこでもある公職の独占がこんな最北の町にも蔓延。

 

 いくら麻薬関与者と名指しされていても、シラを切っていれば済んでしまうフィリピンだが、とうとうこのセブ島最北の町の町長にも暗殺の手が伸びた。

 

 事件は5月にあって、この町長一行が近くの島に行った帰りに港でオートバイに乗った暗殺犯に狙われ襲撃を受け、町長は被弾はしたが命に別状なく、息子やメイド、港で荷物を運んでいた人がとばっちりで怪我をした。

 

 この襲撃は伝統的なオートバイで接近する方法であったが、7月2日の暗殺事件では長距離からの狙撃という方法が取られ、身辺近くを武装したボディーガードで固めても効果がないことが分かり、麻薬関与者達は戦々恐々であることは間違いない。

 

 このような襲撃事件が発生するのは、フィリピンがアメリカ並みに銃器が野放しになっていることから来ていて、麻薬、銃器とフィリピンは問題を抱え、これらが解決できるのかどうか貧困問題と同様で難しいのが現実である。

 


 

author:cebushima, category:フィリピン・よもやま帖 2018, 18:48
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