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フィリピン・よもやま帖 2018 その−(13) 2019年上院議員選挙立候補予定者の下馬評調査は

 フィリピンは3年毎に選挙があり、次は2019年5月に行われる。この選挙では2016年に行われた正副大統領選を除く上院、下院の国会議員、州や市、町の地方自治体首長、議員が入り混じって選挙戦が展開される。

【選挙となると国政自治体議員首長のポスターが入り乱れて張られる】
 

 買収や供応が当たり前のフィリピン選挙では、選挙のある年はGDP(国民総生産)をかなり押し上げていて、これを『選挙特需』というが、確かに選挙期間中の飲食店は普段見せない顔でかなり賑わう。

 

 フィリピンの国政議会の定員は上院が24人、下院は297人、その選出方法は上院が全国区で3年ごとに半数を改選し、任期は6年。下院は地方区選出が238人、政党リストによる選出が59人で任期は3年となっている。

 なお、連続して上院が2期12年、下院は3期9年と憲法で明記されているが、1期休めば再立候補は可能な有名無実の規定となっていて、このため延々と議員職や首長職を続けられる。

 前回選挙では6年任期、再選は禁止されている大統領選が行われ、ドゥテルテが泡沫候補から地滑り的な当選となったのは記憶に新しい。

 上院選は日本のかつての参議院全国区と同じ選出方法を取るが、早くも候補者に対する下馬評が飛び交い、その中で民間調査機関の『パルス・エイシア』が7月8日、候補予定者の支持率調査を発表した。

 それによると、1位の支持率を得たのは、捨て子という境遇ながら、大統領選に出てアロヨを追い詰めたことのある有名俳優の養女となり、前回大統領選に立候補し惨敗しながら再選を狙うグレース・ポー上院議員の67.4%となった。こういう境遇の人はドラマがあってフィリピン人に好まれるが、ただそれだけの人という辛い評価もある

 2位は新興ビジネス街のマニラ首都圏ダギッグ市を一族で牛耳る、ピア・カエタノが1期下院議員職を務めて返り咲きを狙い55.7%。弟はドゥテルテと組んで副大統領選に出たが惨敗し、その後外務長官職を得たが、姉弟で上院の議席を持っていたこともある。ただし、姉の方がはるかに頭も人物も優れている。

 3位はシンシア・ヴィリヤール(現)の50.1%。ヴィリヤールは安価な住宅開発販売で成功した不動産王で、ドゥテルテが出馬するまでは当選する勢いでありながら惨敗した上院議員の妻で、その夫の後釜に立ち当選した。

 4位はドゥテルテの長女でダヴァオ市長職を長年親子で独占するサラ・ドゥテルテの46.2%。フィリピンの上院議員選は芸能界並みの人気投票なので親の名前で、サラは立候補すれば当選濃厚。本人は中央政界に出る気はないといっているが、親のドゥテルテも大統領選に出ないといって散々マスコミを煽って出馬したから、それを見習う焼き直し作戦といわれている。

 5位はエドガルド・アンガラ(現)の41.9%。この人物は父親が著名な法律事務所を持つ弁護士で、上院議員職を長く務めたが引退。その後を引き継いでその親の名で前回は当選したが能力は並み。

 6位は3年置いて返り咲きを狙うジンゴイ・エストラダの37.9%。親は汚職で終身刑を受けながら恩赦を受けたエストラダ元大統領。この息子も汚職容疑で逮捕されやはり長期間、獄に繋がれたがようやく釈放された。元俳優で人気はあるが、親が親なら子も子という見本。

 フィリピンの政治家は逮捕されることは珍しくなく、何しろ大統領が逮捕されてしまうくらいの酷さだが、それでも獄中から立候補して堂々当選するというお国柄。罪状は汚職がほとんどだが、現職上院議員で逮捕されて現在も拘置中のデ・リマは薬物関与で逮捕されている。

 

 デ・リマはアキノ政権時の司法長官で、3年前の選挙で当選。反ドゥテルテとして知られるが、目の上のたんこぶと思ったドゥテルテ陣営から煙たがられたのか薬物関与で逮捕された。本人はでっち上げと主張しているが、運転手を愛人にしていたとか私生活が暴露されてボロボロ。しかし、男の議員は愛人を持っていても全く問題にされないと擁護する向きもあり、何でもありのフィリピンでは驚くことではない。

 7位はドゥテルテの腰巾着として知られ、一地方でしか過ぎない元ダヴァオ警察署長からドゥテルテに引き上げられて国家警察長官に抜擢され『薬物容疑者皆殺し作戦】を指揮。長官退任後も法務省高官に取り立てられているデラ・ロサの37.7%が入った。

 8位はアキリノ・ピメンテル(現)で37.7%。この人物の親は反マルコスの闘士として知られた元上院議員だが、やはり親の七光り組で、ドゥテルテ当選後はドゥテルテに引き上げられて上院議長になったが、あまりの無能力さで最近交代させられた。

 9位はナンシー・ビナイ(現)の37.1%。ビナイ一族はフィリピン一のビジネス街を持つマカティ市を牛耳り、元市長のビナイは副大統領に僅差でなり、大統領職への野望は満々であったが、前回大統領選では惨敗。その代わりに妻を上院に送り込むことに成功。

 10位はセルヒオ・オスメニャ(元)の36.6%。オスメニャはセブを牛耳る一族で、戦時中に選挙を経ない大統領を出したことが自慢で、セブでは泣く子も黙る一族であったが、近年はその威光も通じなくなり前回は落選。

 11位はリト・ラピドの36.2%。この人物はパンパンガ州の知事をしているが、やはり俳優出身で、3年置いて返り咲きを狙っている。このようにフィリピンは元や現の俳優が政治に出る例が目立つが、芸能界も政界も同じ『界』が付くようにそのレベルは同じ。

 

 12位はジョセフ・エヘルシト(現)の35.6%。この人物の親は元大統領のエストラダで6位のジンゴイとは異母弟。姓名が違うのは正妻の子どもではないためだが、フィリピンは妻か愛人の子どもかという区別は全く関係ない風土。

 

 13位はパオロ・アキノ(現)の32.1%。アキノ姓で分かるように親子で大統領を生んだアキノ一族に連なるが、ただそれだけの人物でアキノ家出身者は汚職に縁が薄いというのが売り物である。

 

 14位にアイミ―・マルコスの29.9%。マルコス姓で分かるように独裁者マルコスの長女で現在ルソン島北端のイロコス州知事を3期務める。4期目は出来ないために上院選に出るといわれているが、上院議員であった弟が前回副大統領選に出て落選し、無役のために弟が再び上院選に出るのではと見られ、去就は不明。

 

 この辺りの順位に付けていれば当選の可能性はあるが、以下の順位で目ぼしい候補者を拾ってみると、芸能人で2人、16位に人気俳優のロビン・パディラが28.2%、28位に歌手のフレディ―・アギラが9.3%で入るが、ロビンは薬物で捕まったことがあってもフィリピン人は寛大。

 

 18位に前回大統領選でドゥテルテに破れたマール・ロハスが27.1%で入る。ロハスは元大統領の孫、大財閥の御曹司と毛並みの良さはアキノ以上で、頭も良く政治経験も豊富だが、それが逆に嫌われて前々回アキノと組んだ副大統領選でも敗れた。かつて上院議員選ではトップ当選を果たしている。

 

 19位にボン・レビリア(前)が入る。ボンの父親は子どもを80人以上愛人に産ませたとして知られる俳優で元上院議員。ボン自身も有名な俳優で州知事経験もあるが、汚職で捕まり3年置いて次の上院選で返り咲きを狙うも、支持率は26.7%で少々苦しい。

 

 21位にギンゴナ・契い23.3%。ギンゴナの父親は元副大統領で毛並みは良いが、現職で前回上院選に落選し、復活を計っている。24位に元大統領のアロヨが10.8%で入る。アロヨは汚職で逮捕されても地元の下院議員を2期続けるが、かつて上院選でトップ当選した栄光が忘れず上院選に出そうだが10%台の支持率では恥を晒すのではないか。

 

 25位にドゥテルテの特別補佐官を務めるクリストファー・ゴー、30位に大統領補佐官のハリー・ロケ、47位に大統領府報道班補佐官のモカ・ウソンとドゥテルテの取り巻きが入るが、現段階では当選は難しく、ドゥテルテ陣営の身内で上院を固める作戦は不発気味。

 

 最後に選挙というのは一人一票が原則だが、フィリピンの選挙は定員一杯まで選べ、即ち上院選なら12人の名前が書ける。このため12人の名前を覚えるのは大変で党派がこの通り書いてとリストを投票所前で配っていた。

 

 しかし、今は電子投票式が取り入れられ、シートの名簿に印を付けるようになってこの面倒臭さは解消されたが、議員一人を選ぶ方式に変えないとおかしく、変えないのは12人も選んでくれるなら自分の名前を選んでくれると思う、候補者の助平根性の何物でもない。

 


 

author:cebushima, category:フィリピン・よもやま帖 2018, 18:36
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